インタビュー

新型コロナウイルス予防対策にLPS!?

Q.風邪やインフルエンザの流行に加え、新型コロナウイルスも話題になり「感染症予防」や「免疫」といった言葉を目にする機会が増えてきました。感染症予防と免疫に関係性はあるのでしょうか。

A.私たちの周囲には、目に見えない細菌やウイルスなどさまざまな病原体または病気の原因になる異物が存在します。それらが体内に入り込み、体を弱らせ、命にかかわることもあります。免疫とは、このような病原体または病気の原因になる異物を排除し、私たちの体を守るためになくてはならない仕組みのことです。免疫が働きやすく、病気になりにくい体を維持する力が免疫力です。免疫力を高めることこそ、感染症予防の有効な対策の1つです。

Q.免疫力を高めるためにはどのようなことが必要なのでしょうか?

A. 免疫力を高める=免疫細胞を元気にし、免疫細胞が働きやすい体内環境を作るということ。免疫力を高めるためには、バランスの良い食事、適度な運動、質の良い睡眠、ストレスを発散させる、基礎代謝を上げて体温を高める、肥満を解消する為の規則正しい生活が大切です。 自分でコントロールできて、手軽に今すぐ見直せるのは毎日の食事です。免疫細胞を適度に活性化するLPSを多く含む食材を選ぶことで免疫力は向上し、様々な生活習慣病や感染症を予防することができます。

Q.LPSとは何ですか?

A. LPSとは、アレルギーや感染予防、ひいては健康維持の全てにかかわる優れた素材として、今注目されている物質です。LPSは私たちの免疫細胞、特に自然免疫の中心的な役割を担うマクロファージを活性化します。主に土の中や、植物に多く存在するグラム陰性細菌に含まれています。さまざまな微生物が共生する土壌で育った野菜や穀類、きのこ類、さらには、微生物が豊かに生息する海でとられる海藻などはLPSの宝庫です。LPSは体に必要ですが、自分では作れないことから、ビタミンと似ています。そこで、私たちは「免疫ビタミン」と呼んでいます。

Q.LPSを豊富に含むおすすめの食材はありますか?

A.日常的に摂ってほしいのが、れんこんやじゃがいもなど土壌中で育つ根菜類を皮付きで。また、コメや小麦などの穀類もLPSを含む代表的な食材ですが、精製した白米や小麦ではLPS量はあまり期待できないので、“ブラウン系”のものを選んでください。米であれば、精白米より玄米、金芽米がおすすすめ。さらに、海藻類や健康食材として注目されるきのこ類にもLPSは多く、どちらも積極的に取り入れたい食材です。

Q.それではそれらを意識して食べればいいわけですね?

A.そうですね。さらに食べ方も意識すると、より効果的にLPSを摂取できます。加工食品など食品添加物が多く含まれるものではなく、できれば自然のままの土で栽培されたものを選んで、根菜などは皮にLPSが多く含まれているため、皮ごと調理することがおすすめです。また、LPSは長時間・高温の加熱で壊れてしまいます。生で食べられるものは生食の工夫をして、加熱時間はできるだけ短く、なるべく低温で調理するように心がけてください。 毎日元気に過ごすには十分な睡眠と適度な運動、そして何よりも大切なのが健康的な食生活を送ることです。LPSを積極的に体に取り入れ、免疫力を高め、病気になりにくい体を目指してください。

今回お話を伺ったのは……

稲川裕之薬学博士。 埼玉大学工学部卒業。水野傅一教授と出会い免疫研究の世界に。新技術開発事業団研究員、帝京大学助手、水産大学校准教授などを経て、2010年より自然免疫応用技術研究組合研究本部長、2016年より新潟薬科大学 特別招聘教授(2019年より客員教授)。比較免疫学的研究視点から、食細胞の生物活性に基づいた多細胞動物の健康維持の仕組みとその応用として難治性疾病予防・治療への利用について研究を続けている。また、食品の機能性成分としてのグラム陰性菌のLPSの有用性を約30年前に見出し、以来LPSの有用性に着目した研究も展開している。環瀬戸内自然免疫ネットワーク理事、自然免疫応用技研(株)代表取締役副社長兼務。

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