免疫とLPS

BCGがコロナ抵抗性を上げる理由と"自然免疫の記憶"

BCGにより自然免疫力が上がり、コロナ抵抗性を高めます

BCG接種をしている国は、COVID-19(2019年発生の新型コロナウイルス)の感染者数や死亡者数が少ないという統計が出ています(*1)
そもそも結核菌の予防のためのワクチンであるBCGが、なぜ結核菌と関係のないCOVID-19への抵抗性をあげるのでしょうか?
それは、BCGが、単に結核菌に対する抗体を作らせるだけではなく、ウィルスや細菌が身体に侵入した際に真っ先に駆けつけて排除する「自然免疫力」をも上げるからです(*2)。

しかし、BCGを接種したのは幼少期なのに、なぜ大人になってからも、COVID-19に対する抵抗性が強いのでしょうか。
その鍵を握るのが、「自然免疫の記憶」です。実は、自然免疫の活性化は「記憶」されることが、近年わかってきました。 ここでいう「記憶」とは、自然免疫に関わる遺伝子がすぐに発動できるように、クロマチン(DNAがパックされた構造体)がほどけた状態で維持されているということです(*2)。
遺伝子情報であるDNAは、絡まってしまわないようにヒストンと呼ばれるたんぱく質に巻き付き、さらにそのヒストンが集まって格納されています。しかし、この状態ではすぐに遺伝子を読み込むことはできず、少々ほどけた状態になっていることで、必要な時に読み込みやすくなります。それこそが、自然免疫の活性化の「記憶」で、幼少期のBCG摂取により、COVID-19への抵抗力を上げる理由であると考えられます。

また、自然免疫の記憶をもたらすものはBCGに限るわけではありません。自然免疫をある程度強く活性化できるものはその作用があり、その一つとしてLPSにもその作用があることが報告されています。(*3, 4)。つまり、LPSによって、自然免疫が活性化されると共にそれが記憶されることで、様々な病気の予防効果が期待されるのです。


(*1)https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200405-00171556/
(*2)BCG-induced protection: effects on innate immune memory.
Semin Immunol. 26(6):512-517 (2014)
(*3)https://www.riken.jp/press/2015/20150901_2/
(*4)The transcription factor ATF7 mediates lipopolysaccharide-induced epigenetic changes in macrophages involved in
innate immunological memory. Nature Immunology, published online 31 August (2015)

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