健康への効果

低濃度反復LPS刺激による神経保護性ミクログリアの誘導について

執筆者名:Haruka Mizobuchi, Kazushi Yamamoto, Shoko Tsutsui, Masafumi Yamashita, Yoko Nakata, Hiroyuki Inagawa, Chie Kohchi, Gen-Ichiro Soma
論文名: A unique hybrid characteristic having both pro- and anti-inflammatory phenotype transformed by repetitive low-dose lipopolysaccharide in C8-B4 microglia
雑誌名:Scientific Reports
発行年,巻号:ページ:2020,10:8945
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32488176/

C8-B4細胞(マウスミクログリア細胞株)の反復低用量LPSの投与によって炎症性と抗炎症性の両方に変化するユニークでハイブリッドな特徴

背景/目的:
老化促進マウスにリポポリサッカライド(LPS)を経口摂取させると抗炎症、組織修復作用を示し、アルツハイマー病を予防する可能性が示されています。一方、LPSは、炎症を誘導する因子とされ、細胞試験では、高用量で一回刺激による炎症性サイトカイン誘導試験が証明されています。また、反復試験では高用量LPSによってLPSトレランス研究が行われて炎症性サイトカインの誘導が抑制されています。しかし、LPS経口投与は反復で低用量のLPS刺激が行われていると考えられますが、これまでそのような試験はほとんど報告されていません。そこで、本研究では反復低用量(REPELL)刺激によるマイクログリアの性格を調べました。

方法と結果:
この研究では、REPELL-ミクログリアの特徴を明らかにするために、マウスのC8-B4 マイクログリア細胞株を用いて、1ng/ml のLPSで1 回(SINGLL)または3 回(REPELL)刺激して、遺伝子発現と貪食能を分析しました(図)。REPELL ミクログリアは、炎症性分子(Nos2、Ccl1、IL-12B、およびCD86)、抗炎症性分子(IL-10、Arg1、Il13ra2、およびMrc1 ) 、および神経保護分子( Ntf5 、Ccl7 、およびGipr )の発現がSINGLL と異なり、複数回刺激後でも高いことがわかりました。REPELLミクログリアの貪食能も同様に促進が維持されました。

これらの結果は、REPELL-ミクログリアの遺伝子発現が、SINGLLミクログリアの遺伝子発現とは異なることを明らかにしました。LPS の低用量反復刺激によるミクログリア(脳組織マクロファージ)の形質転換は炎症調節、神経保護、および食作用クリアランスの性質を示し、LPS が経口投与のモデルとなる可能性を示唆しています。

論文

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